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メニューのないレストラン(第1話)


ー第一話ー  ここはメニューのないレストラン  =ご注文通りどんな物でもお作りします=  看板にはそう歌ってあります。  テーブルに着いたその人は  メニューがないので困ってしまいました。  あの~、食べたい物の名前がわからないんですけど  どーやって注文したらいいんですか…?  店員さんは笑顔で応えました。  どんな物でもお作りいたしますよ。  お客様が食べたい!と思うものをイメージしてみてください。  イメージ…ですか?  はい。頭にイメージするだけで結構です。  私どもはお客様のイメージ通りの料理を運んでまいります。  具体的にイメージしてくださると  お客様の要望通りの料理が作れますので  なるべく鮮明に、詳細に、映像化してください。  はあ、、では、やってみます。。  イメージが決まりましたらこのボタンを押してお知らせください。  そう言って優しくテーブルに水を置くと  店員さんはひらひらと行ってしまいました。  イメージ、イメージね…  果たして俺は何が食べたいんだろう…  麺類か??  スープの色、麺の太さ、具の材料…  あーーー、もやもやして鮮明なイメージがわかない…  パン類か??  サンドイッチ、バケットパン、フレンチトースト…   あーーー、俺に合うパンは一体どれなんだ  その人は食事をするためにこの店に入ったのですが  何を食べたいのかが決まらず迷い続けています。  周りを見渡すと  自信を持って注文した料理を食べている人。  本当にこれが自分の注文したものなのか疑いながら食べている人。  鮮明にイメージしなかったのか、ぐちゃぐちゃな料理を食べている人。  簡素な料理を幸せそうに食べている人。  食べきれない程の大量の料理を不満そうに食べている人。  運ばれてきた料理に文句を言っている人。  まだ注文が決まらず悶々としている人。。。  実に様々です。  テーブルの側を通った店員さんにその人は声をかけました。  あの~  わたしの食べるべきものがわからないのです…  あちらの人の食事がおいしそうなのですが  わたしにもアレと同じのを持って来てもらえますか?  残念ですが、他のお客様と全く同じ料理はお作りできません。  お客様ご自身がイメージして下さらないと  私どもはどうすることもできないのです  ボタンが押されるまで私どもはいつまででも待ちますので  どうぞあせらずイメージしてください  店員は笑顔でコップに水を注ぎ足すと  また、ひらひらと行ってしまいました。  困り果てたその人は  レストランの中をさまよい歩きました  すると、あちこちに  「あなたのメニューがわかります」  「あなたの食べるべき食事を占います」  という札を立てたテーブルがありました。  その人は自分の食べたい物を占ってもらうために  ひとつのテーブルに座りました。

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