クリスマスの遠足

ねえ、ママ　見て！　

ぼく、大きくなったでしょ

もうすぐクリスマスだから

いっぱい食べなさいって

最近、たくさんご馳走をくれるんだよ

栄養がたくさん入ってるごはんを

お腹いっぱいに食べさせてくれるの

だから見てママ、

ぼく、急にこんなに大きくなったんだよ

ねえ、どうしてそんなに悲しそうな顔をするの？

ぼくが大きくなって嬉しくないの？

ぼくね、立派なおとなになるんだ

ぼくの友達のお母さんはヘンなことを言うんだよ

ぼくたちがたくさん食べさせてもらうのは

クリスマスになったら

人間たちがぼくたちを食べるためなんだって。

そんなのウソだよね、ママ。

だって、毎日ぼくたちのお世話をしてくれてる人間たちが

まさかぼくたちを食べるためにお世話をしてくれてるわけないよね

ねえ、ママ、そうだよね？

どうして黙ってるの、ママ？

あ、そうだ、ママ

ぼくね、今日、遠足があるんだよ

初めて外に連れて行ってもらうんだ

外ってどんなところなんだろうね

どんな匂いがするんだろう

ぼく早く遠足に行きたいな

ねえ、ママはお外に出たことあるの

ぼくね、遠足から帰ってきたら

お外で見て来たことをママに話してあげるよ

友達はさ、遠足に行くのが怖いんだってさ

それは遠足なんかじゃない

ぼくらは一度外に出たら

もう二度と帰って来れないって言うんだよ

お母さんがそう教えてくれたんだって。

ぼくらはトラックにぎゅうぎゅう詰めにされて

遠くの町へ運ばれて

怖いところに連れて行かれて

痛いことをされるんだって、そいつは言うんだ。

ぼくはそんなの信じてないよ

楽しい遠足に決まってるよね、ママ？

ねえ、ママ？

どうして泣いているの？

まさかママもそんな話を信じてるの？

大丈夫だよ

ぼくはママのところへ必ず帰ってくるから

心配しないでね

だってクリスマスなんだもん

ぼくたちにだっていいことがあるに決まってるさ。

あ、お迎えのバスが来たみたい

人間たちが呼びに来たよ

ママ、ぼく行ってくるね

ねえ、ママ、笑ってよ

お願いだから、笑ってよ

もう行かなくちゃ

ぼくが帰ってきたら

きっと笑ってね、ママ

行ってくるよ、ママ