top of page

メニューのないレストラン(第2話)


   ー第二話ー 「あなたのメニュー、占います」  というテーブルに着いたその人の向かいには  長いドレスを着た占い師がこっちをじっと見て座っていました。  あー、、あなたにはね~~  あれだわ、、いっぱい憑いてるのよ…  ツイテル…??  そう。憑いてるの。霊が、、。  あなた、先祖の墓参り行ってないでしょ?  ご先祖様が怒ってるわよ~  食べたい物が食べれなくて亡くなったご先祖様が  あなたにくっついてて、  アレ食べたい、コレ食べたいって言ってるわ。  だからあなたは自分が何を食べたいのかわからなくなってるのよ。  はあ、、。そうなんですか。。  で、どうすればいいんですか…?  そうね~、除霊が必要だわ、  除霊すればあなたは自分が食べたい物が見つかるでしょう。  じゃあ、お願いします、今すぐ先祖のたたりを取り払ってください。  では、これだけ、前払いでお願いできるかしら?  ぅえっ!こ、こんなにですか…  何が食べたいのか知りたいんでしょう~…?  あ、はい、、払います。  どうぞ。  お金を受け取った占い師は  何品もの食べ物をイメージしてボタンを押し  運ばれて来た料理を見せてこう言いました。  これがあなたのご先祖様たちが食べたがっていた料理よ。  浄化するために、わたしがこれらを食べるわね。  もう心配しなくていわよ。よかったわね。  そう言うと占い師はおいしそうに  料理をペロリと平らげ  じゃ!幸運を祈ってるわ~  と手を振ってシメシメとほくそ笑みながら  立ち去ってしまいました。  テーブルに取り残されたその人は  なんとなく肩が軽くなった気はしたものの  何が食べたいのかはっきりとせず  また、とぼとぼとレストランの中を歩き出しました。  俺は一体何を食べにここに来たんだろう…  すると目の前に  「あなたの過去メニュー教えます」  という看板が現れました。  過去メニュー?なんだろう、、  とにかく何かを教えてくれそうだ。座ってみよう。  その人は過去メニューがわかるというテーブルに着きました。  あなたは過去に13回このレストランに来ましたね。  え!わたしはここに来たのは初めてですけど…  いえいえ、覚えていないだけで  あなたは何度もこのレストランに来ているのですよ。  このレストランに入る前には  過去の記憶をしまい込む約束になっているのです。  はぁ…  これがあなたが過去に食べた料理ですよ  料理を見せられたその人は  過去に自分が食べた料理を見て目を輝かせました。  そうなんですか~!これがわたしが食べた料理なんですね。  わかりました。わたしはこんな食べ物が好きだったんですね。  この中からもう一度食べたい物をイメージすればいいんですね!  いえ!違います。  これはあなたがすでに注文した料理です。  一度食べた料理はもうあなたにとって知っている味です。  今のあなたはもうそれは味わわなくてもいいのです。  まだ食べた事のない料理をイメージしてください。  そうなんですか…  今のわたしは一体何を食べればいいんでしょうか…  教えてください  わたしの仕事は「過去メニュー」を教えることです。  現在のメニューはどうぞご自分でイメージしてください  としか申し上げられません。  鑑定料金を払ったその人は  深くうなだれてテーブルを後にしました  一体、俺は何を食べるためにここに来たんだ…  誰か、誰か教えてくれ…  まわりの人はみな  自分のイメージした料理をおいしそうにほおばっています。  あぁ…  何を食べていいか分からない俺なんか、  どうせ、最初から何も食べる資格なんてないんだ、  食べる価値のない俺なんか、ここにいる必要はない  もう、食べることはあきらめてここを出よう…  出口に向かって歩いていると  お客様。  お食事はお済みになられましたか?  と店員が穏やかな表情で声をかけてきました。  いや、、もういいんです。。  もう、何も食べたくなくなったんです。。  また今度来ます…  お客様。  こちらのレストランは一度お入りになったら  何かご注文されませんとお帰りいただけないことになっております。  ご入店の際に係の者がお客様にご案内差し上げたはずですが…  はい。それを承知で入りました。  でも。もう疲れました。  何もイメージできないんです。  何が食べたいのかわからないんです。  もう、ほっといてください。   わたしは疲れているんです。   ここから出してください。  店員さんを振り切ってドアの取っ手に手をかけた時  あなた…。  誰かの声がしました。  あなた…。

Featured Posts
Recent Posts
Search By Tags
    Archive
    All Stories

    〜奏子のお歌詞箱〜

    Soko's Music & Stories

    bottom of page