top of page

メニューのないレストラン(第3話)


  ー第三話ー  あなた…。  振り向くと見たことのない人が立っていました。  なんですか?  わたしはこれからここを出るんです。  たいした用がないなら声をかけないでください。  わたくし、知っていますよ  何を知ってるんですか、  もうその手には騙されませんよ  どうせ金だけとって本当のことは教えてくれないんでしょ  あなたが食べたいもの。  先祖でもなく、過去でもなく  今のあなたが食べたいもの  わたくし、知っていますのよ  今のわたしが食べたいもの…  そ、それをあなたが知ってるんですか  教えてくれるって言うんですか…?  … …  でも、、もういいんです。  どうせわたしが食べたいものは大したもんじゃないでしょうから…  お声をかけてくれてありがたいですが  わたしの気持ちはもう変わりませんから、、  さような…  ひとくち…  は…?  一口だけ、食べてみようとは思いませんか?  せっかくここに来たのだから  せめて一口だけでも食べてから出てはいかがですか?  … … まぁ… ひとくちなら…  自分も そのぅ… 全く食べたくないわけじゃないし…  実際ここを出ても果たしてどこに行くのかわから…  こちらへいらっしゃい  その人は腕を引かれるようにして  レストランの中央にあるテーブルに座りました。  そこは占いの道具も雰囲気を出すための小道具も何もない、  ただのテーブルでした。  水の注がれた2つのコップと  注文ボタンだけが置いてありました。  その人は差し出された水をゴクリと一口飲みました。  あなたはどうしてわたしの食べたい物を知っているんですか?  わたしの心が読める魔法使いかなんかですか?  うふふ  わたくしはあなたの食べたいものは知りません  なんだって!だましたんですか!!  その人は立ち上がってテーブルをバン!と叩きました。  わたくしは知らないんですけれど  あなたの食べたい物を知っている人を、知ってるって言ったんです。  な、なんなんだ、その紛らわしい言い方は  だったら、そいつを今すぐ連れて来い!  まぁまぁ…  あなた、ここに来てから水ばかり飲んでいらっしゃるけど  お茶でも一緒に飲みませんか    わたくしはアールグレイを注文しますけど  あなたは何になさいます?  そ、そうですね  興奮してしまってお恥ずかしい…  じゃあ、わたしはエスプレッソを…  その人はポケットから取り出したハンカチを額にあてながら  イスに座り直しました。  では、わたくしはアールグレイをイメージして  ボタンを押しますから  あなたはエスプレッソをイメージして  ボタンを押して下さいね  ピラララ~ン  お待たせいたしました  アールグレイのお客様…  わたくしですわ。  どうもありがとう。  アイスカフェオレのお客様…  はぃ??  アイスカフェオレ?  頼んだのはエスプレッソですけど?しかもホットで。。  うふふ  あなた、ボタンを押してから何を考えてた?  えっと、それは…

Featured Posts
Recent Posts
Search By Tags
    Archive
    All Stories

    〜奏子のお歌詞箱〜

    Soko's Music & Stories

    bottom of page